荷役用ドック(ウェットドック)とは、潮汐の干満差が大きな港湾において、ドック内の水位を一定に保つために設けられる閉鎖型の港湾施設です。干潮時でも船底が海底に接触するのを防ぎ、船体を安定させて安全かつ効率的な貨物の積み卸しや乗降を可能にします。
この施設は、満潮時に船舶をドック内へ進入させた後、ゲート(水門)を閉じることで内部の水を閉じ込める仕組みです。これにより、外海の潮位が下がってもドック内の水位は維持され、船舶は常に一定の高さで岸壁に留まることができます。メリットとしては、潮の満ち引きに左右されず24時間体制で計画的な荷役作業が行える点や、船体の動揺が抑えられ安全性が向上する点が挙げられます。一方で、大規模な水門設備の建設・維持管理に莫大なコストがかかることや、船舶の入出港時にゲートの開閉待ち時間が発生するというデメリットもあります。主に欧州など干満差が極めて大きな地域の港湾において、重要なインフラとして機能しています。
荷役用ドックは「スマートポート」の中核として進化しています。IoTやAIを活用した水位・ゲート開閉の自動制御に加え、2024年問題を受けたトラック待機時間削減のため、船側荷役と陸上輸送(シャーシ引き取りなど)のスケジュールをリアルタイムで同期させる港湾DXが加速しています。さらに、ドック係留中の船舶に陸上から送電してエンジンを停止させる「陸上電力供給設備(AMP)」の整備も進み、脱炭素化を目指すグリーンロジスティクスの推進拠点としても重要な役割を担っています。