乾ドック(ドライドック)とは、船舶の建造や検査、修繕を行うために、周囲を仕切って排水し内部を乾燥状態にできる港湾施設です。一般に「ドック」と呼ぶ場合、この設備を指すことが多く、船舶の安全な運行と維持管理に不可欠な存在です。
乾ドックは、水門を開けて船舶を入渠(にゅうきょ)させた後、門扉を閉じて内部の海水をポンプで排水することで、船体を完全に露出させる仕組みを持ちます。これにより、通常は水面下にある船底やプロペラ、舵などの点検・補修、塗装作業を安全かつ確実に行うことが可能です。メリットは、足場が安定し、波や潮位の影響を受けずに高度なメンテナンスや大規模な改造ができる点にあります。一方で、設備の建設や維持に莫大なコストがかかることや、入出渠時の排水・注水に時間とエネルギーを要する点がデメリットです。船舶安全法に基づく定期検査など、海上輸送の安全を支える社会インフラとして極めて重要な役割を担っています。
脱炭素化に向けた環境規制への対応として、乾ドックでは代替燃料船への改造や省エネ塗装などの需要が急増しています。また、人手不足と工期短縮への対応として、ドローンや水中ロボットを用いた点検自動化、AIによる船体劣化診断、3Dスキャンを用いた修繕プロセスのDXが急速に進んでおり、モーダルシフトを支える重要な拠点としてスマート化が加速しています。