アボイダブルコスト(回避可能経費)とは、特定の事業や運行を行わなければ「回避できたはずの費用」を指します。物流分野では主に、JR貨物がJR旅客各社の線路を借りて運行する際、貨物列車が走行したことで追加的に発生した線路修繕費などの増分費用のみを算出する制度を意味します。
この仕組みは、国鉄分割民営化時に貨物鉄道網を維持するために導入されました。JR貨物は、線路インフラの基礎的な維持管理費や固定資産税、トンネル・橋梁等の修繕費、減価償却費といった共通固定費の負担を免除され、列車の運行に伴うレールの摩耗対策費など必要最小限のコストのみを「線路使用料」として旅客会社へ支払います。これにより、JR貨物は運行コストを低く抑え、競争力のある運賃を設定できるメリットがあります。一方で、新幹線延伸に伴い並行在来線が第三セクター化される路線では、この低額な算定方式が適用されず、線路使用料の引き上げや路線の維持が難しくなるといった課題も存在します。
物流におけるドライバー不足や働き方改革への対応、さらには脱炭素社会に向けたグリーンロジスティクスの要請から、鉄道へのモーダルシフトが強く推進されています。持続可能な物流網の維持において鉄道貨物の重要性は極めて高く、このアボイダブルコスト制度を維持しつつ、第三セクター区間の負担軽減や公的支援をどう行うかが、日本のロジスティクスインフラを守る上での重要な焦点となっています。